ちょっと待った!本当にそのFC契約書にサインをして良いの!?
「契約」という言葉に対してあなたはどのようなイメージをお持ちでしょうか。難しいもの、自分を守るもの、ビジネスに必要なもの、とりあえずサインするもの、など人によってその考え方は様々です。それではフランチャイズビジネスにおいてその契約書はどのような意味を持つのでしょうか。きちんと理解して契約を結ばないと契約後に取り返しのつかない事態に陥ることも大いにありえます。
この記事では本部と結ぶフランチャイズ契約についての考え方と絶対に確認しておくべきポイントについて解説していきます。「契約」という言葉にアレルギーがある方もこの記事を読み終わるころにはフランチャイズの契約書を見る時のハードルがグッと下がるはずです。
フランチャイズ契約とはどのようなもの?
FC契約の意味合い
フランチャイズの契約というのは事業者同士で対等に結ばれるものです。この事業者同士というのは資本関係を持たない別々の事業者ということです。はたから見ると加盟店はフランチャイズ本部の下部組織のように見えるかもしれませんがそうではありません。
このように別々の事業者がパートナーとしてビジネスを展開していく中で、両者を結び付け、それぞれの義務や責任を明確にするという非常に重要な役割を果たすのがこの契約書です。もちろんオーナーたちは本部が掲げる理念に共感して加盟するのでそこにも結びつきがあるとは言えますが、資本関係がない中で目に見える形で両者を結び付けているのはこの契約書という事になるのです。
フランチャイズ契約書はフランチャイズ契約の中で自分を守ってくれると同時に、下手をしたら自分を陥れるものとも言えるかもしれません。
いくら加盟者側が「この本部のことを心から信頼しているから大丈夫!」と思っていたとしても、契約書の説明を受けたその場で、一通り内容を熟読もしていない状態でサインをするなんていうのは非常に危険な行為です。また、フランチャイズ契約では普段は聞きなれない言葉も出てくるので、自分の理解を深めるためにも一度持ち帰り、落ち着いて内容を精査することが重要です。
FC契約についての考え方
フランチャイズ契約書を読み込むと、加盟店側が不利な内容で書かれているように感じるものです。先ほどフランチャイズ契約は両事業者にとって対等な契約、という話をしたので「なんだ、結局本部の方が立場が強いんじゃないか」と思われるかもしれません。
実は基本的に契約書はあくまでそのフランチャイズチェーン全体を守る意味合いで作られているものです。例えばある加盟店がそのフランチャイズチェーンのイメージを明らかに失墜させるような行為を行った場合。その場合経営にダメージを与えるのは当該加盟店のみではありません。同じ看板で営業をしている他の個別の加盟店はもちろん、フランチャイズ本部つまりそのフランチャイズチェーン全体にダメージを与えることになります。
そういった意味で契約書をフランチャイズ全体を守るための内容にすると、どうしても本部側が有利な内容に見えてしまうのです。逆に契約書の内容が甘い場合には自分の自由が利く一方で他のオーナーも自由が利くということなので、他者のせいで予期せず被害を被るリスクが増えると言えます。
そのようなリスクマネジメントを考慮して作られた契約書が提示された場合は、不満に思うところもあるかもしれませんが、実際は本部のリスク管理や加盟店の受け入れ態勢がしっかりとできている、と見ることもできるかもしれません。契約書の内容やその説明の丁寧さによって本部の経営の姿勢や能力などが推し量ることができると言っても過言ではないでしょう。もちろん実際に悪質な契約書である可能性もあるのでそこの見極めは必要です。
それでは特にどのような点に注目して契約書を見ていけばよいのでしょうか。次の章で一つずつ見ていきましょう。
サインをする前に絶対に確認するべき項目
1.本部に支払うお金
加盟時に支払う加盟金や保証金の他、月々の支払いが発生するロイヤリティやシステム使用料といったお金があります。それぞれの役割や金額の算出方法について確認しましょう。(フランチャイズでの開業にかかるお金についてはこちら)
加盟金は研修費や開業支援費なども含んでいるのか、もしも契約はしたけど開業ができなかった場合に加盟金は返却されるのかといったところを確認していきましょう。保証金については返還される時期やその方法、また債務の不履行があったときの取り扱いについて記載されていることが多いです。
毎月支払うものにはロイヤリティだけではなく、システム使用料や情報保管料などといった名目で支払いが発生することもあるので十分注意が必要です。ロイヤリティはその算出方法や支払い方法についても本部により様々です。(ロイヤリティについてはこちら)
また、本部によっては加盟するにあたって火災保険など指定する保険に入ることを義務付けることがあり、その場合の支払いについても確認をしておく必要があります。保険についての記載がない場合にも万が一を想定してこちらから質問してみても良いでしょう。
2.商標やノウハウなどの提供される内容
フランチャイズ契約では加盟金やロイヤリティの支払いの対価として本部から商標やノウハウなどが提供されます。これはフランチャイズ契約をし、加盟金やロイヤリティを支払うことで加盟者側が使用する権利を得られる内容について記載されている非常に重要な部分です。支払うお金の対価として得られるメリットなので、独立した起業家としての自覚を持って確認を行いましょう。
実際に加盟者側が本部から享受できる商標やデザイン、ノウハウ、サポートなどの内容について確認していきます。商標や商号についてはブランドのイメージを損なうことがないよう、使用できる条件に付いての記載がされることが多いです。
また、その他にも店舗の内外装やユニフォームなどのデザイン、メニューの調理方法、仕入れの仕方などの他、従業員の研修や開業前後のサポート、開業後の継続的なサポートについても、どのような取り決めがされているのかしっかりと見ておきましょう。
3.契約期間・解約金・更新料
フランチャイズ契約には契約期間が定められることが一般的です。基本的には数か月単位ではなく、短くて1年、多くは3年や5年と規定されています。その期間はもちろん、契約期間のカウントの起点が契約を結んだ日なのか、実際に開業した日なのかについても確認しておきましょう。
契約期間が終わるときの継続については双方の合意があった場合に延長、というパターンや定めた期間内に加盟店側から何も言わなければ自動で更新されるというパターンなどがあります。また場合によっては契約の更新時に更新料が定められていることもあるので要注意です。
覚えておかなければいけないのは契約期間中に解約する場合には解約金が付きまとうということです。金額については定額で定められている場合や、残りの契約期間に応じて算出される場合など様々です。これは安くはないことが多く、経営がうまくいっていないから解約したいけどこの解約金が足かせとなって辞めるに辞められない、という状況も発生します。リスクを想定できるよう契約をする前に確実に把握しておきましょう。
4.違約金について
フランチャイズ本部もしくは加盟店側のどちらかに契約違反があったときには契約を一方的に解除できることが多く、さらに加盟者の違反行為に対して本部が損害賠償金を請求できるよう契約書に取り決めがされているのが一般的です。
金額としては損害相当額という場合や、定額、ロイヤリティの〇〇ヵ月分といったパターンなどがあります。違約金があまりにも高額な場合には裁判で減額されることもあるらしく、契約書の記載が絶対通るという訳ではないようです。
前述の解約金も同様ですが、違約金はペナルティを課すことで加盟店の契約違反に対しての抑止力としての役割を担っています。各加盟店が好き放題やったり、早々に解約して培ったノウハウを他のところで活かすといったそのフランチャイズ全体のイメージダウンや不利益となることを抑え本部自身のみならず全ての加盟店を守っているとも言えます。逆に解約金や違約金の規定がない場合には、その本部がこういったリスクへの対応をどのように考えているのか聞いてみても良いでしょう。
5.テリトリーについての取り決め
当該エリアで同ブランドの他の店舗を出店させない、もしくは規定した店舗数までしか出店させないといった感じで定めたエリアごとの店舗の開業を制限することをテリトリー制と言います(テリトリー制についての詳細はこちら)。テリトリー制についての取り決めも本部により様々ですが、本部側と加盟者側の売上や利害関係に直接影響してくるところなので開業後にトラブルが起きがちです。
独占禁止法の観点からあまりに厳格なテリトリー制は問題視されたり、逆に同ブランド間でも自由競争させた方がフランチャイズ全体としても成長できるといった点から近年は独占的なテリトリー権は与えない本部が増えています。
契約書に記載があってもなくても確認するべき事項です。
6.競業避止義務・守秘義務についての取り決め
競業避止義務とはフランチャイズに関して言うと、所属していたフランチャイズで取り扱っていた事業と同種の事業、もしくはそれと類似した事業を行う事を一定期間禁止する義務のことを言います。守秘義務はそれらのノウハウや企業秘密的なところを他者に開示したり、他に流用することを禁止する義務のことをいいます。
フランチャイズ契約において、加盟店が支払うお金に対して本部が提供するものの1つに経営や運営のノウハウがあります。これを学ぶだけ学んで解約したり、加盟店と並行して他のところでそのノウハウを使われるようなことがあると、フランチャイズ・システムとしての仕組みが崩壊してしまいます。
こちらも今まで見てきたものと同様にそのフランチャイズとして優位性を守るためのリスクマネジメントと言えます。4の違約金と関わってきますが、例えば競業避止義務の違約金の設定が安すぎる場合は、もしかしたら「競業避止義務を破って他のところで開業してるのがバレたとしても、違約金が安いからいいか」と思うような人が出てきたらフランチャイズとして安泰だとは思えません。
一方でとりあえずフランチャイズで経営や店舗運営のノウハウを学んでから自分で開業しよう、と考えている人もいるかもしれません。その場合はこのような決まりがある存在すること自体を知ることが大切です。
まとめ
フランチャイズの契約書にサインをする前に確認するべき内容を見てきました。いくつかの項目がありましたが、全てをまとめるとしたら
「契約書の内容を全てしっかりと理解し、納得して契約を交わすことが大切」
と言えるでしょう。
しかし、1本部だけの契約書を見ていては気づけないこともあります。この記事を読んでいただいたのでかなり知識は付いたかと思いますが、もし可能であれば気になる複数の本部の契約書を見比べてみるとより理解が深まり、新しい気づきもあることでしょう。
この記事と併せて以下の記事をご覧になっていただくとより理解が深まると思います。
プロがズバッと伝授。フランチャイズ加盟を成功に導く知識
presented by みんコレ!起業・独立・開業なび