ベーカリーショップの起業は難しい?
国民食であるパンの人気は高く、パンカフェやベーカリーショップの需要は一定見込めます。しかし、昨今の原料高が経営に与える影響は気になるところです。ここではベーカリーショップを例に、パンをメインに扱うショップの現状を紹介します。
ベーカリーショップの利用率は8割以上
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21の調査によると、ベーカリーショップの現在の利用率は87.2%。2013年調査時の75%と比較すると12%も上回っていて、ニーズの高まりを伺えます。
利用頻度調査では、「年に数回程度の利用頻度」と回答した人が29%と最も高かったものの、週に1回以上利用している人も約18%存在し、ヘビーユーザーの存在を確認できます。
懸念材料は原材料の高騰
ベーカリーショップのニーズが高い一方で、昨今の原材料の高騰化が原因で、利用頻度を抑えようと考える人が増加している背景も、調査結果からはうかがい知れます。
ベーカリーショップを今後も利用したいと考える人は、「どちらかと言えば利用したい」という人も合わせて78%も存在しますが、これは前回調査から10%近く下回る数字です。
この結果からは、物価高の影響が伺えます。パンの単価が上がっているのはパンカフェも同様ですが、競合になりうるレストランと比較すると、パンカフェは一回あたりのコストを低く抑えられる傾向にあります。今後はよりカジュアルに利用できるパンカフェの売上増加を期待できるかもしれません。
パンカフェの開業の流れ
物価高の影響は懸念事項ですが、パンカフェは一定のニーズを期待できる業態です。パンカフェを開業する際には、どのようなステップを踏めば良いのでしょうか。ここからは5つのステップを解説します。
1.コンセプト・メニューを決める
まずはパンカフェのコンセプトを決めましょう。北欧風や和を基調にしたカフェなど、コンセプトを決めることによってメニューも決まりやすくなるはずです。
ただし、自分の理想を追求するのも大切ですが、近隣のパンカフェをリサーチして差別化できるような工夫も大切です。価格設定をする際も、相場を理解しておくことによって適正な値段がつけられるようになります。
2.開業資金の準備をする
次の章でも詳しく説明しますが、パンカフェを開業するにあたってはさまざまな費用が発生します。トータルの相場は700万円前後、なかには1,000万円程度の開業資金が必要となるカフェも少なくありません。
事業計画を立てて、おおよその開業資金の目安がわかったら、早速調達に移りましょう。数百万円から1,000万円程度の資金が必要となれば、金融機関から融資を受けるのが一般的です。複数の金融機関に相談をして、最も条件が良さそうなところに決めましょう。
3.店舗を決める
パンカフェを開く店舗は、遅くてもオープンの半年前には決めておきましょう。居抜き物件を利用するのであれば短期間でも不可能ではありませんが、新築の場合はさらに余裕を見て決めることをおすすめします。
立地や広さ、賃料などを考慮して決定したら、内装設計や施工業者の選定、什器や設備機器などの調達を行わなければなりません。並行してスタッフの募集・教育もこの段階から始めていきます。
4.開業に必要な手続きをする
パンカフェを開業する際、税務署には「開業届」を、保健所には「営業許可申請」を提出する必要があります。開業届はすぐに受理してもらえますが、営業許可申請は、現地検査をクリアして初めて営業を許可されるものです。
そのため、どんなに遅くても施工完了日の10日前までには必要書類を提出して、検査日を決定しなければなりません。
最後に「食品衛生責任者資格の申請」も忘れてはなりません。こちらは事前講習を受けることによって資格を取得できます。
5.広告・宣伝をする
どんなにおいしいパンを扱っていても、カフェが認知されていなければ集客は期待できません。絶好の集客のタイミングであるオープン時を逃すことがないように、最初は集客にも注力していきましょう。
ホームページやSNSを運用してオープンを告知したり、ポイントカードやDMを作成して、地道にパンカフェの魅力を伝えていくことをおすすめします。
パンカフェ開業に必要な資金
パンカフェ開業の流れを理解できたところで、ここからは開業に必要となる費用の相場を紹介します。カフェの開業には大きな金額が動くため、どの部分を節約できそうか考えてみると最小限の資金でスタートできるでしょう。
不動産取得費用
パンカフェの開業に欠かせない店舗の準備には、大きな金額が動きます。すでに存在する物件を利用する場合には、敷金・礼金に加えて数ヶ月分の賃料、保証金などをまとめて支払わなければなりません。立地や面積によって変わりますが、100~200万円程度は見ておきましょう。
改装費
外壁塗装やクロスの張替え、厨房のリフォームなど、店舗内の改装にはさまざまな費用が発生します。外装から内装まですべて改装するとなると、300~400万円程度かかります。
少しでも費用を押さえたいのであれば、これまでカフェとして営業していた、いわゆる「居抜き物件」を探しましょう。すでに必要な設備はそろっているため、最小限のリフォームでお店をオープンできるはずです。
設備費
パンを焼くための窯やオーブン、業務用冷蔵庫、フライヤーや食器など、パンカフェ開業には多くの厨房機器や道具を揃えなければなりません。また、冷房や椅子・机、メニュー表といった家具や小物も必要になってきます。こだわりがあればあるほど費用も高くなる傾向になり、300~400万円程度かかることもあるでしょう。
設備費を抑えるのであれば中古品を選んだり、必要最低限なものを絞って、軌道に乗ったら充実化させていったりすると良いでしょう。
運転資金
パンカフェでは、開業時のイニシャルコストだけではなく、光熱費や賃料、人件費、広告費などのランニングコストが発生してくるものです。自転車操業にならないように、常に100~200万円を確保して、余裕を持たせておきたいものです。突発的な事態にも対応できるようになります。
パンカフェ開業の注意点
パンカフェに憧れる人も少なくありませんが、ビジネスである以上責任を持って運営をしなければなりません。ここからは開業前に覚えておきたいポイントを3つ紹介します。
条例・規制を確認しなければならない
香ばしい匂いはパンの魅力のひとつですが、匂いが強いことから住宅密集地での開業を禁止しているエリアも存在します。また、営業時には調理音やお客さんの話し声を騒音に思われるかもしれません。
物件を決める際には、その自治体の条例や規制を必ず確認し、周囲の環境にも気を配りましょう。
徹底した衛生管理が必要である
食品を扱うパンカフェでは、衛生管理の徹底が非常に重要です。食品衛生責任者の資格取得者を必ず一人配置し、食品衛生法に基づいた衛生管理を実施しましょう。
・清潔な器具・機器の使用
・消費・賞味期限の確認
・生モノの管理
・適切な温度下での食品の保存
最低でもこの4つには気を配るようにしてください。
広告・宣伝活動をしなければならない
知る人ぞ知るアットホームなパンカフェは味がありますが、来店客が限られてしまい、いつまで経っても売上が上がっていきません。競合他社が多いカフェの経営を安定させるためには、やはり広告・宣伝活動が欠かせません。チラシやDM、SNSなどさまざまな方法で集客を図りましょう。
広告や宣伝の方法がわからないのであれば、大手フランチャイズに加盟するのもひとつの手です。パンカフェの経営を熟知したプロからのアドバイスを受けられます。
パンカフェのおすすめフランチャイズ3選
パンカフェの安定経営を望んでいる方には、フランチャイズへの加盟がおすすめです。知名度が高いため、お客さんも入店しやすく、一定の売上を期待できます。メニューはすでに決まっているため、自分で考える必要がなく、集客のアドバイスを受けられるところもメリットです。ここからはおすすめのパンカフェを3つ紹介します。
髙木珈琲
スタイリッシュな外観が特徴的な髙木珈琲は、おしゃれなカフェを経営したいと考えている人にぴったり。珈琲と年間100万枚も提供している「ふわとろパンケーキ」が自慢の自家焙煎カフェレストランです。
カレーやハンバーグといったフードメニューにも定評があり、客単価と回転率は他のチェーン店よりもやや高めで、安定した収益を期待できます。
- 店舗数
- 100(2023年4月時点)
直営店 85 店
加盟店 15 店
- 開業費用
- 加盟金:2,200,000円
保証金:1,500,000円
研修費:550,000円
デザイン設計:3,300,000円
厨房設備・機器類:14,300,000円
内装工事・備品類:49,500,000円
- 募集エリア
- 全国
- 収益モデル
- 想定店舗坪数 50.00坪
売上:9,000,000円
ロイヤリティ:270,000円(総売上3%)
営業利益:1,200,000円
人件費:2,800,000円
賃料:700,000円
その他経費:1,300,000円
パン屋開業支援「セントポールベーカリー」
セントポールベーカリーは、福祉施設やカフェなど、パン店以外の店舗を合わせて100店舗以上を展開しているベーカリーショップです。パンの販売がメインとなりますが、180種類以上のパンのレシピを教えてもらいながら、パン作りの知識や技術を習得していけるはずです。
最低6坪から始められるスモールベーカリーで、狭小物件を利用すれば賃料を押さえられるところも魅力です。
あげ焼きパン『象の耳』
数々のメディアで取り上げられた「象の耳のあげ焼きパン」は知名度が高いため、最初から集客を期待できます。完全なオリジナル商品であるため、競合他社との差別化も容易です。
ロイヤリティと研修費用はともに0円で、集客や法律関連の相談がいつでもできるなど、サポート体制は万全です。初めて起業する方にもおすすめといえます。